京都地方裁判所 昭和63年(ワ)6号 判決 1992年11月27日
主文
一 被告は、原告に対し、金一〇〇万円及びこれに対する平成四年六月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを六分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
理由
一 当事者間に争いのない事実
請求原因1の事実、被告が、昭和五六年四月ころ、被告工場の増築改築を行つて原告建物から約一メートルの至近距離に本件乾燥機を設置し、以来、休日以外の連日、本件乾燥機を稼働させていること、昭和六一年一月末、原告が被告工場に対して、本件乾燥機に関する苦情を申し入れたこと、請求原因4の事実、原告建物及び本件乾燥機がいずれも近隣商業地域にあり、被告が昭和五六年に建築確認未了で被告工場の増改築を行い、本件乾燥機を現在の位置に設置したこと、原告建物一階の東側壁(被告工場との間の壁)がベニヤ板一枚であること、原告建物の一、二階の中間にある屋根部分が被告工場と接着していること、被告が、昭和六一年四月から同年五月にかけて、本件乾燥機の周囲に厚さ約一〇・五センチメートルのコンクリートブロック壁等を設けたことの各事実は当事者間に争いがない。
二 前記一の当事者間に争いがない事実のほか、《証拠略》によれば、次の事実が認められる。
1 原告は、肩書地にある原告建物の一角の原告方店舗(ギンレイカメラ)でカメラ等の写真材料店を営んでおり、被告は、原告建物の東側隣地に所在する被告工場で綿糸の染色並びに乾燥作業を行つている。
被告は、昭和五六年四月ころ、被告工場の増改築を行い、本件乾燥機を現在の位置に設置した。原告建物と被告工場内の本件乾燥機との位置関係は、別紙現場見取図のとおりであり、原告建物から本件乾燥機までは約一メートルの距離である。右増改築後の昭和五六年ころ以降、原告建物の一階部分の東側壁面と、被告工場のうち原告建物の東側に隣接する建物の一階(ここに本件乾燥機が設置されている。)の西側壁面とは、約二〇センチメートルの距離を隔てているが、原告建物の一階と二階の間の屋根部分は、原告建物一階部分の東側壁面を超えて西方に張り出し、本件乾燥機が設置されている被告工場の建物の西側壁面にまで達してこれと接着している。また、原告建物の二階の南東部分でも、本件乾燥機が設着されている被告工場の建物の西側壁面に設置している。
本件乾燥機を設置した以降、被告は、休日を除き、概ね午前八時すぎから午後五時すぎないし六時ころまでの間(但し、正午からの四五分間を除く。)、本件乾燥機を操業させている。
2 原告は、昭和五六年夏ころより、隣家の被告工場からゴーゴーというような音が聞こえてくることに気がつき、いらいらする感じを受けたが、同五八年ころには、被告工場から音を聞いていると、軽い頭痛がするようになつた。さらに、同六一年一月末ころには、原告方店舗に三〇分から四〇分もいると、頭痛がし始め、いらいらが募つて、両肩がぐつと押さえつけられる感じになつた。このような原告の症状は、被告工場の本件乾燥機の操業中ずつと続き、原告は、本件乾燥機の操業が終わると頭痛が取れ、肩凝り、いらいら感も抜けて気分が楽になるというのである。
3 原告は、昭和六一年一月二九日、被告工場の工場長である大寺政治(以下「大寺」という。)に対し、店に長く居て、被告工場の機械から出ている音をずつと聞いていると頭が痛くなり、いらいらする等と告げた上、音を出している機械を移動する等の措置を採るよう強く求めた。
原告の右申入れを受けた被告工場では、本件乾燥機のプーリーの交換等によりモーター回転数を低下させる措置を採つたほか、昭和六一年二月ころ、京都商工会議所から騒音測定器を借りて本件乾燥機の騒音を測定し、同年四月から五月にかけて、本件乾燥機の周囲及び上方を覆う防音壁を設け、併せて、本件乾燥機のモーター脚部に防振ゴムを入れた。右防音壁の仕様は、本件乾燥機の周囲三方(西側、北側、南側)を、厚さ約一〇・五センチメートルのコンクリートブロックの上に壁グラスウールを貼り付けた壁で囲み、本件乾燥機の上方に、フレキシブルボードの間に鉛板を挟んだサンドイッチ板にグラスウールボードを貼り付けた天井を設けるというものであつた。
同年五月、被告工場の大寺は、原告に対し、本件乾燥機を移動することは不可能であり、その代わりに防音壁を設置した旨を伝えて理解を求めた。原告は、右防音壁設置後、被告工場から聞こえる音がやや低くなつたことは認めたものの、なお被告工場からの音に対して不満を持つたので、被告は、今後も機械の改良等の措置を採りつづけることを原告に約束し、その後、同年末ころにかけて、プーリーの交換等によりモーター回転数を低下させる措置を続けた。
原告は、右防音壁設置後もなお、頭痛、肩凝り、いらいら感が続き、さらに、不眠、食欲不振、肩から手の先にかけての断続的なびりびりした痺れの症状がでるほか、ときどき耳鳴りがするようになつた。
4 原告は、昭和六一年ころ以降今日に至るまで、食欲不振、胃腸の痛み、頭痛・肩凝り・喉の渇き・目のくらみ、くしやみ等の風邪のような症状、耳鳴り、胸の圧迫感、肩から指先にかけての痺れ・痛み、不眠等の諸症状のため、各種の病院に次々と通院しており、昭和六一年一〇月二九日当時、過敏性胃腸症候群による胃腸の痛みのため、京都市上京区千本通上立売上ル作庵町所在の上京病院に、昭和六一年ころから平成元年一月二九日ころにかけて、風邪のような症状が長引いたため、京都市北区紫野上築山町三二所在の北病院に(風邪薬をもらつて飲むが効果なし。)、耳鳴り等の症状のため、京都市上京区河原町通広小路上る梶井町四六五所在の京都府立医科大学付属病院に、昭和六一年ころ、胸が圧迫されるような感じや動悸のため、京都大学医学部付属病院内科に、食欲不振、胃腸の痛みのため、京都市伏見区深草向畑町一-一所在の国立京都病院に(レントゲン検査の結果、胃腸には異常はなく、結局、胃薬を出してもらつただけであつた。)、昭和六三年一月一三日当時、手足の痛み・痺れのため、京都市北区紫野東船岡山一四番地所在の本挽接骨院に、昭和六一年九月四日当時、頭痛、不眠症や風邪のような症状が長引いたため、京都市上京区堀川通今出川上る北舟橋町八六五番地所在の堀川病院に(頭痛薬をもらうだけで、それ以上は医師もわからないという。)、京都市北区紫野雲林院町八九の一所在の富川病院にそれぞれ通院していた。
なお、昭和五六年以前、原告には、慢性胃炎、神経痛等の持病はなかつた。
5 原告は、昭和六二年三月に、被告を相手方として、本件乾燥機の騒音、振動による原告の精神的・財産的損害の賠償を求める調停を京都簡易裁判所に申立て、同年四月から七月八日までの間、前後三回にわたり調停期日が開かれた(京都簡易裁判所昭和六二年(公)第二号)。その際に原告が提出した原告作成に係る「書証(証拠写真)。主張事実の説明付」と題する書面には、原告方店舗に三〇分も居れば頭痛がひどくなり、気が狂わんばかりになる旨の説明書きがされている。右調停は、同年七月八日不成立に終わつた。
6 右調停不成立の後である昭和六二年七月ころ、原告は、京都市北区の図書館で、低周波音によつて原告と同様の症状が発生している人のいることを報じる書物を読み、その際、初めて低周波による人体被害のことを知り、被告工場からも低周波音がでているのではないかとの疑いを持つたことから、京都市公害対策室に対し、原告方店舗内での低周波音測定を依頼した。そこで、京都市保健所は、同年七月某日、同年八月二七日の二回にわたり、原告方店舗等での低周波音測定を実施し、その結果、被告工場から低周波音が発生している事実が確認された。
7 原告の家族は、妻紀子、長女陽子、長男義則の三名であり、いずれも原告建物に同居しているが、原告以外の家族には、原告と同様の内容・程度の諸症状は現れていない。
以上1ないし7の各事実が認められる。原告は、その本人尋問において、昭和五九年一〇月ころ、原告が被告工場の当時の工場長であつた訴外松野に対し、被告工場から聞こえる音につき苦情を申しいれたとして、右認定に反する旨の供述をするが、その際の原告の松野に対する苦情の内容は原告の供述からも明らかでなく、結局、にわかにこれを措信しがたい。また、証人大寺政治は、昭和六一年一月二九日に原告が大寺に対し苦情を申しいれた際、原告は健康被害については全く訴えていないかに窺える趣旨の右認定に反する証言をするものの、右証言は、前後の経緯に照らし不自然であり、措信しえない。他に右認定を左右する証拠はない。
三 前記一の当事者間に争いがない事実に加えて、《証拠略》によれば、次の事実が認められ、この認定を左右する証拠はない。
1 汐見文隆医師(以下「汐見医師」という。)は、和歌山のメリヤス工場、西名阪自動車道路等の低周波被害の症例を調査、研究した医師であるが、平成元年一〇月初めころ、原告から、低周波被害について手紙・電話で相談を受けたことから、原告が訴える健康被害の原因を調査・究明することとし、まず、同月一三日、原告を自己の診療所で診察し、原告から、前記二の2及び4認定のとおりの原告の症状の内容及び経過を聞くとともに、原告のレントゲン、心電図、血液検査の各検査を行つたが、血液の血糖値が少し高く潜在性の糖尿病があつたほかは、異常は見られなかつた。
右の診察及び検査の際、原告には鼻血を中心とする出血傾向や発作性の頻脈の症状は認められず、また、シェロングテスト(寝ているときと、立つているときの血圧の変動を調べて、変動幅が大きい場合には自律神経失調症の疑いありと診断されるもの。)は実施されなかつた。
2 次いで、汐見医師は、同月一五日、同月一九日の両日、原告方店舗で、被告工場の操業日(平成元年一〇月一九日)での本件乾燥機の操業中及び停止中並びに被告工場の休みの日(同月一五日)の三つの場合それぞれで、オールパス(二Hzから一〇〇Hzまでの周波数の各音圧レベルの合計)(単に「オールパス」という。)及び周波数分析(二Hzから一〇〇Hzまでの間の一定の周波数毎での音圧レベル)(以下単に「周波数分析」という。)の双方につき、原告方店舗内の低周波音の測定をした。
汐見医師らは、右の測定の際、原告方店舗内で、本件乾燥機の操業中だけに聞こえるワァーンワァーンというような不快な唸り音を聞いた。原告は、汐見医師に対し、原告方店舗に居るときこの音が聞こえてくると、三〇分も耐えられず、真先に頭全体が締めつけられるような頭痛がし、次いで、両肩を押さえつけられ、両耳がビーンとする感じがして、居ても立つてもいられない状態となり、店の隣にある原告方の居間に逃げ込み、そこにあるテレビのボリュームを上げて見ていると体が楽になつてくるし、また、昼休み等で本件乾燥機が停止すると、諸症状がすつと楽になるが、だるい感じはなお一、二時間は持続する、と説明した。
右の測定は、通常の本件乾燥機の操業状況と条件が変わらないようにするために、被告工場側には何ら知らせないままで行われ、また、原告の普段の生活に近い状況にするため、窓や戸を全て閉じた上、原告方店舗のほぼ中央を測定位置とし、更に、原告方店舗付近を車が通過する走行音により測定値が非常に高くなるのを避けるために、可能な限り車の走行音を除外するようにして、実施された。
右の測定の結果は、以下に示すほかは別紙低周波音等測定結果のとおりである。すなわち、本件乾燥機の操業中の測定値は、オールパルでは六五dBを、周波数分析では、二〇Hzにおいて、最大音圧の五七dBをそれぞれ示している。また、周波数分析につき、本件乾燥機の操業中と停止中とで比較すると、二〇Hzにおいて、最大差の一二dBを示している(操業中は五七dB、停止中は四五dB)。
3 汐見医師は、前記1の原告の症状の内容及び経過並びに前記2の本件乾燥機の低周波音測定結果を検討した結果、以下の理由から、原告の訴える健康被害の原因は、本件乾燥機から発生している低周波音であると診断した。
<1> 前記2の測定結果のうちの本件乾燥機の操業中及び停止中の各周波数分析の数値を比較すると、本件乾燥機が操業されると、四Hzを除く各周波数の音圧が引き上げられ(特に、二〇Hzでの音圧は、停止中の四五dBから五七dBまで、一二dBも上がつて最大幅の上昇を示している。)、このような二〇Hzを中心とする低周波音が、本件乾燥機の操業中にだけ聞こえ、また、原告がその健康被害の原因であると訴える、被告工場から聞こえる前記の不快な唸り音の原因であると推定できる。
<2> 汐見医師が、前記和歌山のメリヤス工場等の低周波被害について調査した結果によれば、低周波被害の症状としては、頭痛、いらいら、不眠がその三主徴であり、そのほか、目の痛み、耳鳴り、肩凝り、手足の痺れ、胸の圧迫感、動悸、吐き気等の症状がばらばらではつきりしない不定愁訴的な症状である(なお、未だ断言できないとしつつ、鼻血を中心とする出血傾向、非常に強い目眩、突然非常に脈が速くなる発作性頻脈の各症状が多いように思われるという。)が、原告の諸症状も、右の低周波被害の三主徴等の症状とよく似ている。
<3> 原告は、原告方店舗に居てこの音が聞こえてくると、頭痛等の諸症状が生じて三〇分も耐えられなくなるが、昼休み等で本件乾燥機が停止すると、諸症状がすつと楽になる等、原告の症状と本件乾燥機の作動・停止とは連動している。
<4> 本件乾燥機の操業中の低周波音の測定値(オールパスでは六五dB、周波数分析での最大音圧は、二〇Hzでの五七dB)は、非常に高い数値とはいえないけれども、昭和五六年四月ころの本件乾燥機の操業開始以来、被告工場の就業時間中絶えず恒常的に本件乾燥機から低周波音が発生し、一方、原告は、本件乾燥機から約一メートルの至近地点にある原告方店舗で、被告工場の就業時間中ずつと店番をしており、そのため、本件乾燥機から発生する低周波音に長期にわたつて暴露しているという状況からは、右の測定値の低周波音は十分に健康被害が発生しうる程度のものといえる。
<5> 低い音圧レベルでの低周波音被害は、緩やかに進行し、数年にわたる長期の暴露の経過で徐々に増幅していくところがその特徴であるが、原告の症状も、本件乾燥機の操業開始から約三年後の昭和五九年ころに始まり、昭和六一年一月ころに著しい状態になつており、右の低い音圧レベルでの低周波音被害の特徴と符合する。
<6> 原告にはその多岐にわたる症状を説明するような原疾患の存在が認められない。
四 低周波音の人体への影響等につき、一般的に以下の各事実が認められる。
1 《証拠略》によれば、一〇〇Hz以下の音を低周波というが、山梨大学工学部工学博士山田伸志(以下「山田博士」という。)は、低周波音は、物理的に胃、心臓に作用する可能性は少なく、むしろ、主に耳の感覚によつてとらえられて脳・神経系を通じて、「いやだ。」という感覚を引き起こし、ストレスとして人に作用し影響するものである(ストレス説)と考え、このようなストレス説の根拠として、<1>低周波音は、自動車、バス、電車、新幹線の中では九〇ないし一〇〇dBもの高い音圧レベルに達するが、乗客・運転手には低周波音被害は現れない、<2>低周波被害を訴える人は、「あの低い音が嫌だ。」等とはつきりした感覚を指摘している、等の理由を挙げている。
2 《証拠略》によれば、山田博士は、低周波音発生装置(高さ一・八メートル、縦一・一九メートル、横一・一一メートルのボックスの天井に七六センチメートルφスピーカーを取り付け、発振器により正弦波を発生させ、オーディオ用の直流電力増幅器を通じてスピーカーを駆動し、ボックス内の席についた被験者に低周波音を聞かせるもの。)を用いて、ボリュームで低周波音のレベルを徐々に上げていき、被験者が何らかの音等を感じたときにボタンを押して合図する方法で、二〇歳台の大学生を主とする二〇ないし五〇歳の男女二四名を対象とする最小可聴値(人の聞きうる最小の音圧レベルの程度。閾値ともいう。)の測定実験を行つた結果、その平均値、各周波数において一番感度の良かつた者、悪かつた者のそれぞれの値は、別紙低周波音の最小可聴値のとおりであるが、周波数毎の最小可聴値最低値(感度のよい人の最小可聴値)は、八Hzで約八三dB、一〇Hzで約八一dB、一二・五Hzで約七七dB、一六Hzで約六八dB、二〇Hzで約六二dB、二五Hzで六〇dB、三一・五Hzで約五三dB、四〇Hzで約五〇dB、五〇Hzで約四五dB、六三Hzで四〇dBであつた。一番感度の良かつた者と悪かつた者とでは二〇ないし二五dBの、一番感度の良かつた者と平均とでは一〇ないし一五dBの差がそれぞれあり、最小可聴値は個人差が大きいといえる。
3 《証拠略》によれば、山田博士は、右2の測定実験の方法で、学生二六名の被験者に対し、一六Hzの低周波音を一分間暴露させ、「圧迫感、落ちつかない」等の感覚の有無・程度を回答させた上、これと最小可聴値との関係を調べたところ、最小可聴値より五dB低い音圧レベルでは低周波音の感覚はなく、最小可聴値より一dB高い音圧レベルではごくわずかの心理的な反応があり、最小可聴値より高くなるに従つて反応が強くなるとの結果が得られ、これより、低周波音は、その音圧レベルが最小可聴値ないし閾値を超え、人が低周波音の存在を知覚したことによつてはじめて「いやだ。」という心理反応が発生して、精神的・神経的なものを介して諸症状が生ずるものであるとする。
4 《証拠略》によれば、次の事実が認められる。
低周波空気振動が人体に与える作用については、定性的には種々の現象が報告され、だいたいの様相が明らかになりつつあるが、体系的・基礎的な研究、殊に定量的な検討については、未だ進んではいない。
生理学的な実験は、短時間のものにならざるを得ず、そのため、なんらかの現象を観測するには、高レベルの空気振動を与えることが必要になるが、しかし、実際に近時問題になつている低周波音被害は、長時間低レベルの暴露の場合であり、対象者は一般住民で、健常者だけでなく病弱者も含まれている。
低周波振動を人が感じうる閾値に関しても、多くの被験者について数回実験する程度ならば、研究者の実験結果報告はほぼ一致するものの、苦情を訴える住民及び低周波振動に対する感覚が鋭敏になるような訓練を受けた被験者の中には、一〇ないし二〇dBの異常に低い閾値を示す者もあることが報告され、また、通常の感覚を持つ健常者を、一六Hzに対する感覚が生じるように訓練した結果、閾値が低下したとの報告例もある。更に、被害を訴える住民のうちで感覚が鋭敏な人の場合は、振動源に対する強い関心が認められ、それによつてさらに感覚が敏感になつているように見受けられる。このようなことから、将来、低周波振動による長期的作用に対する環境基準を設定するときには、この個人差及び訓練効果の幅についても考慮する必要がある。
5 《証拠略》によれば、次の各事実が認められる。
環境庁大気保全局長は、昭和五二年一一月一日の衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会での低周波対策についての質問に対し、低周波により、身体的・神経的・精神的にいろいろな影響があると報道されているが、どの範囲が確かに低周波の影響として起こつているのかわからないし、非常に個人差があつて、どの範囲を低周波の影響としてつかまえるかということはなお相当時間がかかるものと思うが、低周波の大きさと影響の関係が理論的に解明されるまでは対策をしないというわけではなく、少しでも防止技術が分かつてきたものはどしどし対応していきたい、との旨の答弁をした。
昭和五三年版、五四年版の各環境白書でも、低周波空気振動対策につき、低周波空気振動の発生源は多種多様で、その防止対策も不十分であり、未だ低周波空気振動の生理的影響等に関する研究に着手した段階であるし、低周波空気振動のレベルと心理的・生理的影響等との相関の把握についても、個人差が大きいこともあつて、基準の設定には至つていないが、現実に苦情・被害が発生している以上、早急に防止対策を進めたい旨の報告をしている。
6 《証拠略》によれば、次の事実が認められる。
長期間にわたる低周波音の慢性暴露によるラットの生体影響を調べた実験で、低周波音の発生源(大型車の通過による)である奈良県香芝町の西名阪自動車道香芝高架橋直下及びその周辺の二か所において、約二〇か月にわたり、ラットを自然環境下で同時飼育し、右飼育期間の前後でのラットの生体影響の有無・程度を、低周波音の音圧レベルの高い場所(高架橋直下。以下「O地点」という。)と低い場所(高架橋から五〇〇メートルの地点。以下「S地点」という。)とで比較したところ、O地点で飼育されたラットは、S地点で飼育されたラットに比し、明らかに生存率の低下が認められ、血液・生化学的検査所見で見られるように、肝機能、腎機能の低下傾向、呼吸器系疾患の増加傾向、副腎の肥大、胃潰瘍等が認められ、ストレス状況下にあつたものと考えられる。このように、明らかな優位差がでたが、右の両地点での最大音圧は、それぞれ、O地点では、二〇Hzでの八〇dB、S地点では、一六Hz付近での五六dBであつた。
以上のとおり認められ、この設定を左右する証拠はない。
五 以上の認定事実を前提に、まず、前記認定の原告の諸症状と本件乾燥機から発生している低周波音との間に相当因果関係があるかどうかの点につき、判断する。
1 前記三の認定事実によれば、汐見医師は、本件乾燥機の操業中に原告方店舗内では被告工場から不快な唸り音が聞こえ、本件乾燥機からの低周波音の発生を裏付ける低周波音測定結果もあること、原告の症状の内容及び推移並びに本件乾燥機操業開始時期との前後関係、原告の症状と本件乾燥機の作動・停止とが連動していること、昼間中店番をしている原告の生活状況及び本件乾燥機から発生する低周波音の暴露期間の長さからは、本件乾燥機の操業中の低周波音の程度でも、健康被害が発生するとして矛盾はないこと、また、原告にはその多岐にわたる症状を裏付ける他の病気もないことを総合して、原告の訴える症状は本件乾燥機から発生している低周波音によるものであると診断したというものであつて、このような汐見医師の診断は十分これを首肯することができ、原告の訴える症状(但し、後記3で判示するとおり、左耳の聴力障害を除く。)は、本件乾燥機から発生している低周波音によるものであると認めるのが相当である。
2 これに対し、被告は、いくつかの事実を指摘して、因果関係を争つているので、以下これらの点につき補足的に説明しておく。
(一) 前記四の1ないし3認定のとおり、低周波音の音圧レベルが最小可聴値ないし閾値を超え、人が低周波音の存在を知覚したことによつてはじめて「いやだ。」という心理反応が発生し、精神的・神経的なものを介して低周波音による諸症状が生ずるものであるのに、汐見医師の測定による原告方店舗での低周波音の最大音圧は、五七dB(二〇Hzでの数値)と、山田博士の実験結果による最小可聴最小値(二〇Hzでは約六二dB)すら下回つている事実があるけれども、前記三の2認定のように、原告方店舗で本件乾燥機の操業中だけに聞こえるワァーンワァーンというような不快な唸り音は汐見医師もこれを聞いており、原告方店舗で唸り音が聞こえること自体は証人大寺も自認しているほか、右に示した二〇Hzでの最小可聴最小値(約六二dB)は、短時間の暴露での実験結果であり、前記四の4認定のように、底レベルでの低周波音の暴露でも長期間にわたると慣れが生じる等して最小可聴値ないし閾値が低下することがあるとされるのだから、本件のように底レベルでも長期間にわたる低周波音の暴露の場合に当然に妥当する資料とはいえず、結局、原告方店舗での低周波音の最大音圧(二〇Hzでの五七dB)が前記の実験結果による最小可聴最小値(二〇Hzでは約六二dB)を下回つていることの一事実をもつて、右1の認定を覆すには足りないというべきである。
(二) 原告建物に同居している原告以外の家族には、原告と類似の症状が現れていない事実も、前記四の4認定のように低周波音に対する感覚等は個人差が大きいのであるから、右1の認定を左右するものではない。
(三) 汐見医師の診察では、原告には、鼻血を中心とする出血傾向、突然非常に脈が速くなる発作性頻脈の各症状が認められなかつたものの、そもそも、右の各症状は、前記三の3認定のとおり、汐見医師が、未だ断言できないとの断りを付した上で、低周波音による症状には様々な不定愁訴的な症状があるが、このような症状を示すことが多いようであると指摘しているにすぎず、未だ確立された他覚的所見といえるものではないし、右各症状がなければ直ちに低周波音による影響が否定されてしまうという筋合いのものでもないから、右1の認定を左右するものではない。
(四) 前記四の6認定のラットの長期暴露による実験結果も、右実験中の前掲S地点は低周波音発生源から五〇〇メートルも離れた地点であるのに対し、本件では、原告方店舗は低周波音発生源から約一メートルの地点にある等、条件を異にするから、本件に当然に妥当する資料とはいえず、直ちに本件の低周波音のレベルでの原告の症状の発生を否定しうるものではなく、右1の認定を覆すには足りないというべきである。
3 《証拠略》によれば、前記京都府立医科大学での純音聴力検査の結果、原告の左耳に三〇ないし五〇dBの聴力障害が認められた事実が認定できるものの、前記認定の本件乾燥機から発生する低周波音の音圧レベルに照らすと、この左耳の聴力障害と本件低周波音との因果関係は不明であり、本件低周波音による障害とまでは認められない。
4 以上判示したところにより、原告の訴える諸症状(左耳の聴力障害を除く)は、本件低周波音と相当因果関係があり、本件低周波音によるものであるというべきである。
六 原告の差止請求及び損害賠償請求について
1 人の身体・健康の権利及び平穏安全な生活を営む権利としての人格権に対して侵害を受けた者は、加害者に対して、不法行為に基づく権利として損害賠償請求権を有するほか、物上請求権と同質の権利として、現に行われている侵害行為を排除するために、侵害行為の差止請求権を有するものというべきであり、原告が、人格権(健康で文化的な生活を営む権利)に基づいて侵害に対する差止を請求しているのも、この意味において、首肯できるところである。
ところで、日常の社会生活や企業活動を通じて、騒音・振動等が発生することは、事柄の性質上、ある程度はやむを得ないことであり、他人の引き起こした騒音・振動等による被害に対しても、一定の限度まではこれを我慢しなければならないのであつて、それゆえに、騒音・振動等が社会生活上一般に受忍すべき限度を超えたときに、はじめて、その騒音・振動等を発生させる行為が違法なものとなるということは多言を要しないところである。
そして、騒音・振動等を発生させる行為の差止請求が認められるか否かは、受忍限度を超えた違法な騒音・振動があるというだけでなく、被害者側の当該侵害の停止が認められないことにより被る損害と侵害者側の右停止により忍ぶべき犠牲等の諸事情を比較考量した上で、これを決すべきものと解するのが相当である。
2 低周波被害に対する一般的な対策につき、次の各事実が認められる。
(一) 《証拠略》によれば、現在、低周波音に対する法的な規制の根拠となる基準値は設けられていないが、その理由は、前記四の5認定のとおり、未だ低周波空気振動の生理的影響等に関する研究が不十分で、低周波空気振動のレベルと心理的・生理的影響等との相関の把握についても、個人差が大きく、なお十分解明されていないという事情から、一般的な基準の設定には至つていないというにすぎず、決して低周波被害に対する個別的な救済の必要なしとする趣旨ではない。
(二) 《証拠略》によれば、日中は、低周波音とともに他の通常の可聴音が存在し、この可聴音によつて低周波音がかき消されて聞こえないこと(マスキング作用)が多いが、夜間、周囲が静かになり、低周波音をかき消していた他の可聴音が減ると、低周波音がよりひどく感じられるので、低周波音被害は夜間のほうが昼間より大きいといわれる。
そして、低周波被害の対策として、右のマスキングを利用して、一日中、テレビやラジオをつけて、これらからの通常の可聴音により低周波音をかき消して聞こえないようにする方法があり、低周波被害にあつている者でこの方法を用いる人が多いものの、長期間にわたつて低周波音に悩まされると、低周波音のみを聞き分けて、マスキング作用が効かなくなることもあり、この方法のみに頼ることはできないといわれている。
(三) 《証拠略》によれば、低周波被害の対策として防音壁を作る方法では、通常の可聴音は低下するものの、超低周波音(二〇Hz以下の音)は通常の可聴音ほどは低下せず、その結果、前記のマスキング作用の逆の現象として、超低周波音被害は増強されることになりうる。
以上のとおり認められ、右認定に反する証拠はない。
3 先に認定した事実に加えて、《証拠略》によれば、次の事実が認められる。
(一) 被告が、昭和六一年五月ころ、本件乾燥機の周囲及び上辺を覆う防音壁を設置する等の措置を採つていたことは、先に二の2において判示したとおりである。
(二) 被告工場の敷地内には、本件乾燥機を設置した建物のほか、屋根を異にする建物が幾つかある。被告工場敷地の北西角には事務所があるが、その地下には約三メートルの深さのコンクリート製の地下槽があり、本件乾燥機をそこに移転するにはこの地下槽を潰さなければならない。本件乾燥機の北側には食堂があるが、そこに移転させようとすると、右食堂付近にある大黒柱を切り取ることになるが、それはできないことである。右食堂の更に北側には原糸置場と工具室を収めた建物があるが、建物の高さが本件乾燥機本体の高さに満たないため、そこへの移転は不可能である。本件乾燥機の東側には晒場があるが、晒場の機械類は地下約三メートルに埋設されており、移動は容易ではない。また、本件乾燥機を被告工場内の他の場所へ移転しようとすると、他の機械類についても移転することになり、被告工場内の建物の全体に影響が及ぶことは避けられない。
(三) 証人汐見文隆の証言によれば、低周波音を発生する機械類を設置してある建物と隣の建物とが接着して、低周波音発生源の機械類と隣の建物とが何らかの形で連なつていれば、隣の建物へ伝わる低周波音は強くなることが認められ、先に二の1で認定したように、原告建物の一階と二階の間の屋根部分(以下「原告建物の屋根」という。)は、原告建物一階部分の東側壁面を超えて西方に張り出し、被告工場のうち原告建物の東側に隣接する建物(以下「被告建物」という。)の一階(ここに本件乾燥機が設置されている。)の西側壁面にまで達してこれと接着しているというのであるけれども、証人汐見文隆の右証言は、尋問の経過からして、一般論を述べたのにすぎず、《証拠略》によれば、原告建物の屋根が、前記被告建物の一階の西側壁面に接しているのはわずかな部分であるし、原告建物の一階部分の東側壁面と、前記被告建物の一階の西側壁面とは、約二〇センチメートル隔たつていると認められることのほか、右の原告建物の屋根と被告建物との接着により原告建物に伝わつてくる低周波音がどの程度強くなつているのか、また、この接着している屋根部分を切除すれば原告建物に伝わつてくる低周波音がどの程度軽減するのかについては証拠上明らかでないのだから、結局、全証拠によつても、原告側の回避措置として、原告が原告建物の屋根の接着している部分を切除することにより前記認定の原告の健康被害を消失ないし軽減できると認めることはできないというほかない。
以上のとおり認められ、右認定に反する証拠はない。
4 すすんで、以上の認定事実をもとに、原告の差止請求及び損害賠償請求について検討することとする。
(一) 前記五認定の本件低周波音と因果関係のある原告の諸症状(左耳聴力障害を除く)をみると、器質的変化を伴つた病気とまではいえないものの、単なる情緒的影響や読書・思考等の生活妨害にとどまらず、頭痛や消化器症等の身体的影響を受けており、その程度は軽からぬものというべきである。また、原告は、本件乾燥機の操業開始の後、各種病院に通院するほどの症状がでた昭和六一年ころ以降の約六年余にわたり、連日、朝から夕方まで、本件低周波音に暴露しており、このような暴露期間の態様及び長さのほか、前記二の1認定のように、そもそも、本件乾燥機は、昭和五六年の被告工場の増改築の際に、現在の位置に設置されたものであるが、原告方店舗からわずかに約一メートルの至近距離に置かれており、いかにも原告への配慮に欠けていたものといわざるを得ず(しかも、弁論の全趣旨によれば、被告は、右増改築の際に本件乾燥機を現在地に設置したとき、原告が原告方店舗でカメラ店を経営し、昼間は店にいるということを熟知していたものと認めることができる。)。このような事情を総合すると、本件低周波音は、社会生活上受忍すべき限度を超えるものというべきである。
被告は、本件低周波音の最大音圧レベル(二〇Hzにおける五七dB。)が、二〇Hzでの最小可聴平均値はもちろん最小可聴最小値(約六二dB)さえも下回つているという事実をもつて、本件低周波音は、社会生活上受忍すべき限度を超えるものではないと主張するけれども、そもそも、被告のいう最小可聴平均値・最小可聴最小値とは、先に四で認定したように、短時間の暴露による実験の結果である上、低レベルでの低周波音の暴露でも長時間にわたると慣れが生じる等して最小可聴値ないし閾値が低下することがあるといわれ、また、低周波空気振動の生理的影響等に関する研究(殊に低レベルでも長期間にわたる低周波音の暴露の影響について)が不十分であり、しかも受ける影響の程度は個人差が大きいというのであるから、本件のように低レベルでの長期暴露の事案で、最小可聴平均値・最小可聴最小値を受忍限度の基準として用いて、これに達しない低周波音について一律に受忍限度内であるとするのは早計である。
(二) 次いで、原告の差止請求につき検討すると、本件低周波音が発生する時間帯は、概ね朝八時ころから夕方五時ないし六時ころまでであり、低周波音被害がきつくなるとされる夜間には発生していないこと、低周波音対策として、テレビ等の可聴音で低周波音をマスキングする方法があり、万全ではないものの、原告もこの方法で一定の成果を上げているものと認められること、防音壁の低周波音対策としての有効性には問題がないではないものの、被告は防音壁の設置等の措置を採つて、原告の被害の軽減に尽力していること、本件乾燥機を被告工場内の他の場所に移転することは、被告工場の建物の取り壊し等を要し、被告の営業活動に与える影響は大きいというべきことの各事実を総合すると、本件では、原告の差止請求を認めるだけの強い違法があるとはいうことができず、結局、原告の差止請求はこれを認めることができないというべきである。
原告は、原告建物及び本件乾燥機はいずれも近隣商業地域内にあり、被告は、昭和五六年、建築基準法第四八条及び同法別表第二の〔に〕(近隣商業地域指定地での原動機を使用する工場の作業場の床面積を一五〇平方メートルに限る。)に違反して、被告工場を増改築した際に本件乾燥機を現在の場所に設置したものであるから、被告は、本来、本件乾燥機を現在の場所に設置して操業することはできなかつたのであり、現在の場所での操業差止による法的不利益を主張しうる立場ではない、と主張するのであるが、そもそも、本件差止請求権は、被告の発する低周波音によつて原告に生じた各症状を理由とするものであり、一方、建築基準法は行政取締法規であつて、これに違反したことが本件差止請求権に直結するわけではないから、被告の建築基準法違反の事実の有無を判断するまでもなく、原告の右主張は、理由がない。
(三) 進んで、原告の損害賠償請求につき検討すると、前記認定によれば、被告は、昭和六一年一月二九日、原告より、本件乾燥機からの音についての苦情(原告の健康被害の発生を含む。)を受けたというのだから、本件乾燥機からの音による原告の健康被害の発生を知り又は知り得べきであつたと認められ、本件低周波音が受忍限度を超えることは先に判示したとおりであるから、被告は原告が本件低周波音により被つた損害を賠償すべき義務を負うものである。
そして、原告が本件低周波音による前記五認定の症状により、精神的、肉体的な苦痛を受けたことは明らかであり、原告の症状の内容及び程度、本件低周波音の暴露の態様(恒常性等)並びに発症後の暴露期間に照らすと、原告の被つた精神的、肉体的な苦痛を慰謝するには一〇〇万円をもつてするのが相当である。
なお、原告は、右損害賠償請求に対する訴状送達の日の翌日(記録上、昭和六三年一月一五日であることが明らかである。)からの遅延損害金を請求しているのであるが、継続的不法行為という本件の性質上、原告としては、第一審口頭弁論終結時までの慰謝料を一括して請求しているものと解されるから、そうである以上、右慰謝料請求に対する遅延損害金は、第一審口頭弁論終結の日の翌日(記録上、平成四年六月六日であることが明らかである。)からのみ起算しうるものと解すべきである。
七 結論
以上判示したところにより、原告の本訴請求は、被告に対し、金一〇〇万円及びこれに対する平成四年六月六日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから、右の限度でこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小北陽三 裁判官 加島滋人)
裁判官岡健太郎は差支えのため署名押印することができない。
(裁判長裁判官 小北陽三)
《当事者》
原 告 元生満雄
右訴訟代理人弁護士 川中 宏
被 告 横田株式会社
右代表者代表取締役 横田幸雄
右訴訟代理人弁護士 山田 正 右同 安富 厳 右同 堀野家苗
山田正復代理人弁護士 村中弘美